みなさん、幼少期にショッピングモールで迷子になったことありますか?
この記事では、「フォールスメモリ(虚偽記憶)」という人間の記憶に関するショッピングモールの迷子実験を紹介します。
これは実は、人間の記憶はあまりあてにならないぞ、ということを証明した実験です。
裁判の証言での信用性などにも関わっていたりして、明日使える雑談のネタになるかもしれません。
また、幼い子と関わる仕事をしている人にとっては、子どもの記憶能力について参考になる知見です。
是非最後までご覧ください。
フォールスメモリ(false memory)とは?
フォールスメモリの辞典での説明
まず、心理学辞典の説明を見ていきましょう。
有斐閣現代心理学辞典では、フォールスメモリ(虚偽記憶)について、
実際に見たり。聞いたりしていないことを想起すること。虚記憶、虚偽記憶ともいう。
と説明されています。
アメリカの認知心理学者であるエリザベス・ロフタスという人が、フォールスメモリの研究を行なっており、ショッピングモールの迷子実験などを行いました。
実験については、後ほど説明します。
何かを勉強する際に辞書や辞典を参照することはとても大事です!
最近では、ネット上で知識を取り入れることも多いと思います。
しかし、たくさんの情報が溢れているほか、ときには誤った情報が混ざっていることもあり、勉強がうまく進みません。
始めに、辞書や辞典で、定義等の正確な情報を確認することで、理解がブレずに学習を進めていくことができます。
手元に辞書や辞典をご用意されることを強くオススメします。
フォールスメモリ(false memory)の解説
フォールスメモリには虚再生と虚再認の2種類がある
はじめに、フォールスメモリについて、解説していきます。
フォールスメモリには2種類あります。それぞれに関する実験を紹介します。
実験1(虚再生)
実験では、このようにある単語を覚えさせ、想起させる(思い出させる)ということを被験者に行わせたところ、
提示された単語リストにはないものの、リストから連想される単語を誤って想起するというミスが見られました。
このように提示されていないものを再生することを「虚再生(false recall)」と言います。
実験2(虚再認)
…
実験では、ある単語をいくつか提示した後、いくつかの単語を見せ、最初の単語リストにあったかどうかを被験者に答えさせました。
そうしたところ、被験者は、提示されていない単語でも、意味や音韻的に近い単語について「あった」と答えてしまうミスが見られました。
このように、なかったものについて認識してしまうことを「虚再認(false recognition)」と言います。
フォールスメモリ(虚偽記憶)には、虚再生と虚再認の2種類がある。
ショッピングモールの迷子実験とは?
人々の記憶は簡単に歪められることを証明した
では、次に、虚偽記憶に関する有名な実験であるショッピングモールの迷子実験を紹介します。
この実験は、虚偽記憶の研究で有名なエリザベス・ロフタスが行いました。
ロフタスは、幼児期に親から虐待を受けたと訴える人の記憶の中には、虚偽記憶が含まれている可能性があると考えました。
それを証明するために、ロフタスは、ショッピングモールで迷子になったことがない人に、ショッピングモールで迷子になったことがあるという虚偽記憶を植え込む試みをしました。
実験方法
まず、被験者であるAくんの親に過去のエピソードをいくつか聞き取ります。
そのエピソードの中に、ショッピングモールで迷子になったというAくんが経験していないエピソードを付け加え、Aくんに読んでもらいます。
実験結果
実際に経験したエピソードと経験していないエピソードを混ぜてAくんに読ませたところ、Aくんは、「ショッピングモールで迷子になった」という経験していないことまで、まるで経験したかのように思い出したのです。
さらに、ストーリーの詳細を話すと、だんだんとはっきり思い出したように(ありもしないのに)迷子になったことを懐かしんだりしたようです。
この結果は、人々の記憶はその後の経験や、思考、感情、誘導尋問などによって歪められてしまうことを示唆しました。
フォールスメモリの例
他にも例を紹介します。
例1 事件の目撃者
とある事件の目撃者に対し、複数の容疑者の写真の中から犯人の写真を選ばせることをします。
はじめは、「この中ではこの人が一番似ているような気がする」といった程度の記憶でも、だんだんと虚偽記憶が形成され、実際に自分が選んだ容疑者の顔を見た際に「この人が犯人だ!」と強く確信してしまう、というようなことがあります。
例2 誘導質問
2つのグループに車がぶつかる映像を見せます。
片方のグループには「どのくらいのスピードで車は激突しましたか?」と尋ね、もう一方のグループには「どのくらいのスピードでぶつかりましたか?」と尋ねます。
そうすると、「激突」と聞かれたグループの方が、「ぶつかり」と聞かれたグループより、速いスピードを答えたり、(実際は破れていないのに)ガラスは割れていた、など印象により記憶が操作されるということがあったようです。
まとめ
- フォールスメモリ(false-memory)とは「実際に見たり。聞いたりしていないことを想起すること。」
- 虚偽記憶には、虚再生と虚再認がある。
- ショッピングモールの迷子実験など、人間の記憶は、その後の経験、感情、思考、誘導尋問などによって簡単に歪められてしまう。
- →事件の目撃証言などの信用性に疑問が投げかけられた。
参考文献
「フォールスメモリ」. 豊田弘司. 『有斐閣現代心理学辞典』. 初版. 有斐閣, 2021, p.665
齊藤勇監修 田中正人著. 『図解 心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』. 誠文堂新光社
エリザベス・F・ロフタス, K・ケッチャム. 『抑圧された記憶の神話ー偽りの性的虐待の記憶をめぐってー』. 誠信書房