この記事では、「初頭効果(primacy effect)」という心理学用語についてわかりやすく説明していきます。
初頭効果は、日常生活の中やビジネスシーンでさまざま活用できるものですので、是非最後まで見てみてください!
初頭効果(primacy effect)とは?
まず、心理学辞典の説明をみていきたいと思います。
有斐閣現代心理学辞典では、初頭効果(primacy effect)について、
系列位置効果の一種で、記銘したリストの最初の系列位置の数項目の記憶成績が、他の系列位置で提示された項目よりもよくなる現象
と説明されています。
社会心理学者のソロモン・アッシュが提唱しました。
刺激の提示順序に応じて、記憶の成績が異なる現象。
最初の数項目の再生率が高いことを初頭効果(primacy effect)、最後の数項目の再生率が高いことを親近性効果(recency effect)と呼ぶ。
何かを勉強する際に辞書や辞典を参照することはとても大事です!
最近では、ネット上で知識を取り入れることも多いと思います。
しかし、たくさんの情報が溢れているほか、ときには誤った情報が混ざっていることもあり、勉強がうまく進みません。
始めに、辞書や辞典で、定義等の正確な情報を確認することで、理解がブレずに学習を進めていくことができます。
手元に辞書や辞典をご用意されることを強くオススメします。
初頭効果(primacy effect)の解説
初頭効果(primacy effect)の英語の意味
まず、言葉の意味を確認します。
初頭効果は英語で、primacy effectと言います。
primacyとは英語で「第1位」「首位」といった意味があります。
なにやら「最初の方」に関する効果だということですね。
初頭効果(primacy effect)の実験
次に、どのような実験を行い初頭効果が発見されたかを説明します。
実験 単語の再生
20個程度の単語を順番に提示し、記憶してもらいます。
最後の単語を見せた直後に、どんな単語があったかを自由に報告してもらいます。
そうしたところ、始めに提示された数項目の再生率(単語を答えられた数)が高かったのです。
最後の数項目の再生率も高く、これを親近性効果(recency effect)と呼びます。
親近性効果は、短期記憶によるものと考えられています。
初頭効果(primacy effect)の特徴
少し、専門的で細かい話になっていきますが、初頭効果がどのようなものなのか説明していきます。
初頭効果には次のような特徴があります。
- 初頭効果は長期記憶である。
- 初頭効果はリハーサルが行われることによって生じる。
- リハーサルが多く行われると、より初頭効果は強まる。
初頭効果は長期記憶によるもの
実験の続き
単語を思い出させる実験の続きです。
今度は、実験の際、最後の単語を提示してから、30秒程度、記憶することを妨害をしてから、単語を思い出させることをしました。
そうすると、初頭効果のみられる序盤、そして中盤の再生率は影響を受けず、親近性効果のみられる、終盤の単語の再生率のみ、低下しました。
実験の解釈
単語の提示直後に邪魔をされると、終盤の単語のみ再生率が下がりました(親近性効果が薄れた)。
それはなぜかというと、もともと終盤の単語の再生率が高いのは、単語が直前に提示され、短期記憶によって、頭に残っているからなのです。
感覚記憶の中で、重要と感じたものなどを数秒から数十秒記憶しておくもの
反対にいうと、邪魔をされても、再生率が下がらないというのは、短期記憶ではなく、半永久的に記憶ができるとされる長期記憶として、単語が保存されているからなのです。
短期記憶の中で、特に印象的なものや記憶する努力(リハーサル)をしたものなどを半永久的に記憶するもの。
①過去のエピソードや②言葉の意味、③身体的な記憶(自転車の乗り方など)がある。
初頭効果はなぜ起こるのか?リハーサルが行われるから
初頭効果は、なぜ起こるのでしょうか。
それは、まさに初頭効果が長期記憶であることが理由となっています。
長期記憶の仕方
人間は、3種類の記憶方法を使います。
常に刺激として入ってくる膨大な情報を無意識的に一瞬記憶しておく感覚記憶。
感覚記憶の中から、意識を向け、数十秒程度一時的に記憶しておく短期記憶。
そして、短期記憶の中から、覚える努力(専門用語でリハーサル(rehearsal)と言います。)をして記憶する長期記憶。
何かを記憶する際に、声に出して、または黙ったままで繰り返し唱えること。一時的に忘却を防ぐ「維持リハーサル」とすでに持っている知識との結びつけをおこなったり、イメージを持ったりする「精緻化リハーサル」がある。
序盤に提示された単語は、中盤や終盤に比べ、一生懸命覚えようとする努力が多く行われ(精緻化リハーサルが行われ)長期記憶に保存されると考えられます。
そのため、中盤に比べて再生率が高く、30秒程度の妨害があっても再生率が下がらないという特徴があります。
多くリハーサルが行われれば、初頭効果は強くなる
単語の提示回数が多かったり、提示される時間が長くなると、リハーサルもよく行われるため、初頭効果は強くなります。
初頭効果(primacy effect)の活用法
活用法1 第一印象をよくしよう
アッシュは、ある人物の特徴をいくつか提示し、知らない人に対する印象(第一印象)がどのように形成されるかの実験を行いました。
その結果、特徴が提示される順序が印象形成に大きな影響を与えることがわかりました。
未知の他者に関する情報を処理・統合し、その他者に関する表象を形成すること。
他者の情報としては、社会的役割や身体的特徴、その人の行動などが用いられる。
実験 人物の印象
始めにもつ印象=第一印象がいかに大事かがわかりますね。
始めの情報である第一印象は記憶に残りやすいため、始めに悪い印象を与えてしまうと、そのあとも全体的に悪いイメージを持たれてしまいやすいです。
印象を形成する上で、見た目は大きな影響を与えます。
合コンなどで、初対面の人に好印象を与えるためには、清潔感のある格好にしたり、笑顔を意識したりするなど、見た目を気にしましょう!
「見た目が重要」ということの根拠としてメラビアンの法則という心理学用語がよく語られます。
しかし、メラビアンの法則について、世間的に理解されている内容は誤解されていることが多いです。メラビアンの法則についても説明していますので、是非ご覧になってください。
活用法2 ビジネスでも初頭効果は使える
例えば、商品を売り込みたい場合などでは、1番のアピールポイントは一番最初に何度も伝えましょう。
そうすることで、アピールポイントが強く記憶に残り、商品の購入等に繋がります。
まとめ
これまで話してきたことを以下にまとめます。
系列位置効果の一種で、記銘したリストの最初の系列位置の数項目の記憶成績が、他の系列位置で提示された項目よりもよくなる現象。
リハーサル(rehearsal)が行われることで、精緻化が起こり、提示された刺激が長期記憶に保存されるため、初頭効果が起こる。
人物の印象形成においては、始めに提示された特徴が、全体の特徴の印象にも影響を与える。
参考文献
「初頭効果」. 今井久登. 『有斐閣現代心理学辞典』. 初版. 有斐閣, 2021, p.380
齊藤勇監修 田中正人著. 『図解 心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』. 誠文堂新光社