この記事では、ドライブ理論(drive theory)について、解説していきます。
ドライブ理論とは、周囲から期待が寄せられたときの人間の反応についての心理学用語です。
観客がいたり、周囲から期待が寄せられたりしたときに、うまく結果を出せない人も多いですよね。
是非最後まで読んで、周囲の期待をうまく活用できる人になりましょう。
ドライブ(動因)理論(drive theory)とは?
ドライブ(動因)理論の辞典の説明
まず、心理学辞典の説明を確認します。
有斐閣心理学辞典では、ドライブ(動因)理論について、
よく学習した課題や単純な課題を遂行する場合のパフォーマンスは促進されるが、学習が不十分な課題や複雑な課題では、逆にパフォーマンスは抑制される
と説明されています。
アメリカの社会心理学者のロバート・B・ザイアンスが提唱した理論です。
もう少し詳しく説明していきます。
何かを勉強する際に辞書や辞典を参照することはとても大事です!
最近では、ネット上で知識を取り入れることも多いと思います。
しかし、たくさんの情報が溢れているほか、ときには誤った情報が混ざっていることもあり、勉強がうまく進みません。
始めに、辞書や辞典で、定義等の正確な情報を確認することで、理解がブレずに学習を進めていくことができます。
手元に辞書や辞典をご用意されることを強くオススメします。
ドライブ(動因)理論(drive theory)の解説
周囲の存在により起こる社会的促進、社会的抑制
まず、周囲から期待を寄せられた際に、より高いパフォーマンスを発揮できるようになることを社会的促進と言います。
反対に、周囲から期待を寄せられた際に、緊張してしまい、パフォーマンスが下がってしまうことを社会的抑制と言います。
アメリカの自転車競技の記録を分析したところ、単独で走行していたときより、競い合うときの方が良い成績が生まれたことから現象が発見されました。
F.H.オルポートがこの現象を社会的促進と名付ました。
人が緊張したときに起こるドミナント反応
人は緊張すると、これまでに十分に学習した(もっともよく行ってきた)行動をとる傾向があることを、ザイアンスは、ドミナント反応と呼びました。
少し難しい言葉を使うと、
他者の存在が行為者の覚醒水準を高めることで、行為者が十分に学習した行動の反応の生起を促進させる
と言うことになります。
- ドミナント(dominant)とは「支配的な」「優勢な」などの意味の英語です。
結局、ドライブ理論とは?
そして、先ほど述べた社会的促進や社会的抑制は、ドミナント反応によるものだとしたのがドライブ(動因)理論です。
- 他者の存在→行為者がよく学習した行動を起こさせる(ドミナント反応)
- ドミナント反応によって、社会的促進もしくは社会的抑制が起こる
どのようなときに社会的促進が起こるのか?
では、どういうときに社会的促進が起こり、どういうときに、社会的抑制が起こるのでしょうか。
それは、課題が単純か複雑か、パフォーマンスの学習(練習)が十分か不十分かによります。
課題の困難さ
周囲の期待が寄せられたとき、課題が、単純なものであるとこれまでにしてきた行動をとるだけでも課題を達成することできるため、パフォーマンスが高くなります。
反対に課題が困難である場合、今までやってきたことだけで、急にできるようになることはないので、パフォーマンスが下がります。
パフォーマンスの学習度
これまでに経験したことがない課題であっても、十分に練習するなどして、よく学習しておけば、緊張する本番でもよくやってきた練習どおりのことができるということです。
反対に、練習が足りず、学習が不十分なことは、緊張する本番で急にできるようになることはないということです。
- 課題が単純orパフォーマンスの学習が十分→社会的促進
- 課題が困難orパフォーマンスの学習が不十分→社会的抑制
まとめ
繰り返しになりますが、これまでのことをまとめます。
- 他者の存在→緊張→行為者がよく学習した行動を起こさせる(ドミナント反応)
- ドミナント反応によって、社会的促進もしくは社会的抑制が起こる
どういうときに、社会的促進もしくは社会的抑制が起こるのか
- 課題が単純orパフォーマンスの学習が十分→社会的促進
- 課題が困難orパフォーマンスの学習が不十分→社会的抑制
努力は嘘をつかないと言うことが心理学でも証明されてますね。
そのことの背景を説明する理論にひとつが今回のドライブ理論でした。
参考文献
1)「社会的促進」. 池田浩. 『有斐閣現代心理学辞典』. 初版. 有斐閣, 2021, p.334
齊藤勇監修 田中正人著. 『図解 心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』. 誠文堂新光社