この記事では「マジカルナンバー7±2」という心理学用語を解説します。
日常での活用法などもわかりやすく紹介していきます。ぜひ最後まで読んでください。
マジカルナンバー7±2とは?
マジカルナンバー7±2の心理学辞典での説明
まず、心理学辞典の説明をみていきましょう。
有斐閣現代心理学辞典では、人間が物事を一度に記憶できる容量について、
記憶範囲には、大きな個人差が存在するが、一般には、5〜9(チャンク)の間におさまる
と説明されています。
アメリカの認知心理学者であるジョージ・アーミテージ・ミラーがこの記憶の容量を、「マジカルナンバー7±2(5〜9)」という言葉で説明しました。
もう少し詳しく解説していきます。
何かを勉強する際に辞書や辞典を参照することはとても大事です!
最近では、ネット上で知識を取り入れることも多いと思います。
しかし、たくさんの情報が溢れているほか、ときには誤った情報が混ざっていることもあり、勉強がうまく進みません。
始めに、辞書や辞典で、定義等の正確な情報を確認することで、理解がブレずに学習を進めていくことができます。
手元に辞書や辞典をご用意されることを強くオススメします。
マジカルナンバー7±2は短期記憶の容量を表す言葉
記憶の種類
まず、人間の記憶の種類を紹介します。
人間の記憶には、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3つの種類があるとされています。
そのうち、マジカルナンバー7±2は短期記憶に関する心理学用語です。
簡単に、短期記憶とは、
「感覚記憶の中で、重要と感じたものなどを数秒から数十秒記憶しておくもの」です。
例えば、電話で聞いている内容を一時的に記憶し、メモする時などに用いられるものです。
短期記憶の容量
認知心理学者のミラーは、この短期記憶において、
人間が一度に記憶できる容量は、7±2個、つまり5〜9個(チャンク)であると
考えました。
記憶について補足
少し記憶について補足しておきます。
人間が生きている中で、五感を通じて入ってくる膨大な情報を1秒にも満たないようなごく短期間の間だけ記憶しているもの。ほとんど忘れ去られていく。
短期記憶の中で、特に印象的なものやリハーサルといって記憶する努力をしたものなどを半永久的に記憶するもの。
①過去のエピソードや②言葉の意味、③身体的な記憶(自転車の乗り方など)がある。
なお、長期記憶の①過去のエピソード、②言葉の意味を合わせて宣言的記憶、③身体的な記憶を手続き的記憶といいます。
また、人間の脳に常に入ってくる膨大な情報から意識を向けたもののみ認識し(感覚記憶から短期記憶、長期記憶とうつるにつれ厳選し)記憶していくという説をフィルター理論と言います。
チャンクとは?
チャンクは「まとまり」を表すことば
問題
突然ですが、問題です。
1、つぎのひらがなを5秒で覚えてください。
き な ゅ と り と す び ま う
2、つぎのひらがなを5秒で覚えてください。
と ま と き ゅ う り な す び
いかがでしょうか。
1に比べて、2の方はかなり簡単だったと思います。
解説
ここからが、重要になります。
実は、1と2は、ひらがなの順番を変えただけで内容は同じです。
なぜ、2の方が簡単だったかというと、2の方は、野菜の単語になっているからです。
1の場合、ひらがなを 10 個覚える必要があります。
一方、2の場合、野菜の単語を 3 個覚えるだけでいいのです。
同じ内容なのに、覚える個数が違いますよね。当然個数が少ない方が覚えやすいです。
このように、一度に覚えられる容量は単なる情報量ではなく、7±2つの まとまり(チャンク)であるとするのが、マジカルナンバー7±2です。
マジカルナンバー7±2の活用方法
活用例1 ジャンル分けをする
例えば、誰かに
豆腐、ポテトチップス、ティッシュ、しらたき、ボールペン、牛肉、チョコレート、ラップ、ねぎ、綿棒
のおつかいを頼みたいとします。
全ての物を一気に伝えるのではなく、一度ジャンル等に分けてから伝えることで、相手は記憶しやすくなります。
すき焼き、お菓子、その他の3つのジャンルを覚えるのは簡単です。
ジャンルは3つ、各ジャンルに含まれる内容は2〜4つで、いずれも7±2以下のまとまりであるため、一気に伝えた時より、相手は記憶しやすくなります。
活用例2 あえて7±2以上伝え、すごい量である印象を与える
マジカルナンバー7±2の容量を、あえてはみ出すという技があります。
一度に与えられる情報が容量をはみ出すと、受け手はどういう印象をもつでしょうか。
このようになると思います。
この「覚えられないくらい多いこと」が良いことだったとすると、覚えられないくらい良いことがたくさんある!!という印象をもつことに繋がります。
なのでこの方法は、商品を紹介する際に、とにかく商品の印象をよくしたい場合などに7±2個以上良さを伝えることで、
この商品は、良い点がいっぱいある!!
という印象を持たせることに活用できます。
一方で、商品の比較検討であったり、商品のバリエーションを示したい際など、相手にしっかりと情報を伝えたい場合には7±2以下になるよう意識すると良いでしょう。
このように目的によって使い分けることが大切ですね。
まとめ
マジカルナンバー7±2についてお伝えしてきたことを以下にまとめます。
- マジカルナンバーとは、短期記憶において、一度に記憶しておける容量を表す言葉で、7±2個(チャンク=まとまり)である。
- 相手に物事を伝える際には、7±2以下のまとまりになるように意識する。逆に、わざと7±2以上になるようにする方法もある。
これまで、マジカルナンバー7±2としてお伝えしてきたのですが、近年、マジカルナンバーは4±1(3〜5)であるとする研究があります。
これを意識すると、確実に記憶してもらいたい場合は3個(チャンク)程度までにして、逆に覚えられない量を伝える際には、6個(チャンク)以上にするといいかもしれません。
感覚的には3〜5の方が記憶できる容量として正確な気もしますね。
引用・参考文献
「記憶範囲」. 齊藤智. 『有斐閣現代心理学辞典』. 初版. 有斐閣, 2021, p.140
齊藤勇監修 田中正人著. 『図解 心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』. 誠文堂新光社